2010年1月27日水曜日

サザン・ソウルの断片~Dan Penn

Artist:ダン・ペン&スプーナー・オーダム
Album:Moments From This Theatre
Song:Sweet Inspiration









1960年初頭、南部アラバマ州にマッスル・ショールズという小さな町がありました。すべての音楽が、カントリーミュージック一色だった、この町の一角に、リック・ホールという青年が小さなスタジオを取り仕切るようになりました。Florence Alabama Music Enterprises(FAME:通称フェイム)と名付けられたこのスタジオはその後、サザン・ソウルの歴史に大きな足跡を刻むことになります。新しいスタジオには才能のあるスタッフ・ライターが集まってきました。ダン・ペンもその一人でした。
 そして66年アラバマ州のこの片田舎で録音された、パーシー・スレッジの”When A Man Love A Woman"(男が女を愛する時)が大ヒットし、一挙、マッスルショールズの名前が音楽関係者の間で注目されることになります。(実はこの曲、フェイム・スタジオの録音ではなく、別のスタジオでフェイムのスタッフを借りて録音されたといわれています。)67年、アトランティック・レコードはこのフェイムにいち早く目を付け、敏腕プロデューサーのジェリー・ウェクスラーがここに、一人の女性アーティスを連れてやってきます。その名はアレサ・フランクリン、”I Never Love A Man"(貴方だけを愛して)はそこで完成された曲です。そして、ダン・ペン達にも次々と仕事が、舞い込みはじめました。ダン・ペンは素晴らしいキーボードプレーヤーでもあるスプーナー・オーダムとコンビをくみR&B、ソウルの名曲を多数、残すことになります。
 マッスル・ショールズはその後、スタックスと並んで、サザンソウルのメッカとなりました。オーティス・レディング、ウィルソン・ピケット、ジャイムス・カー、アーサー・アレキサンダー、などの黒人アーティスだけなく、オールマン・ブラザーズ・バンドをはじめスティーヴ・ミラー・バンド、そこに在籍していた、ボズ・スキャッグスなど、ロックミュージックシャンのあこがれの地でもありました。70年代になると、大挙して、この地に、色々なミュージシャンが訪れます、いわゆる、「マッスル・ショールズ詣で 」です。
  それから、30年の歳月が経ち、ダン・ペンは朋友のスプーナー・オーダムと二人だけのライヴ・アルバムを作りました。自分達の書いた名曲を、セルフカヴァーしたものですが、至ってシンプルな作りですが、一曲一曲を愛おしむように歌っており、しみじみと胸にしみこんでいきます。ダン・ペンの歌声を聞くと、力強く、暖かい「男の背中」を連想します。

以下に、このアルバムに収められた曲と歌ったアーティストを挙げて起きます。
1. I'm Your Puppet(James & Bobby Purify,Elton John & Paul Young)
2. Sweet Inspiration(The Sweet Inspilations)
3. Cry Like a Baby(The Box Tops)
4. Do Right Woman, Do Right Man(Aretha Franklin)
5. I Met Her in Church(The Box Tops)
6. Lonely Women Make Good Lovers(Bob Luman)
7. It Tears Me Up(Percy Sledge)
8. Dark End of the Street(James Carr,Aretha Franklin,Ry Cooder)
9. You Left the Water Running(Otis Redding)
10. Out of Left Field(Percy Sledge)
11. Memphis Women and Chicken(T Graham Brown)
12. Woman Left Lonely(Scott Walker,Janis Joplin)
13. I'm Living Good(Louis Williams)
14. Ol' Folks(新曲)

 サザン・ソウルには黒人と白人が協調しながら、作りあげた音楽という側面があると今でも思っています。(スタックスもそうです。)一方、「いやそれは、元々、黒人がそれまで培ってきたソウルを白人達が、一時期商売のために利用しただけだ。70年代にそれが黒人の手に戻ってきた、当たり前のこと」という意見もあります。そのためか、いままで、Dan Pennなどの白人ライターはブラック・ミュージックの歴史のなかでは軽視されていました。

 最近、「スウィート・ソウル・ミュージック―リズム・アンド・ブルースと南部の自由への夢 」(ピーター ギュラルニック (著))が刊行されやっと、このあたりのサザン・ソウルの歴史が詳細に書かれるようになりました。今後、正当に評価がされてくることを期待したいと思います。ほんのサワリではございますが、「サザンソウルの断片(Dan Penn)」でございました。お後がよろしいようで。
 
(Song:”Sweet Inspiration”のオリジナル・バージョンです)

(ダン・ペンがこの曲を歌っている映像は)

(ダン・ペン&スプーナー・オーダムさんのデュオによる渋いライブ映像)


2 件のコメント:

  1. 「俺はただ、自分の音楽を探してただけさ・・・なぁ、オーダム!」「そうだな、ペンちゃん・・・俺たち不器用だからな・・」そんな会話をしたかどうかは定かではありませんが、福岡の小さなライブでしたがダン&スプーナーのコンサートが思い出されますな・・・。

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  2. 覚えてますよ。一緒に見に行きましたね、まさにこのライヴの再現でした。ソング・ライターはあまり歌うまくない人が多いんですけど、ダンちゃんは格別ですな〜。こんな曲ですと、歌ってくれるヴォーカリストに教えるデモの時点で、すでに歌い方も完璧に、完成されていたと書いてあります。

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