2010年9月29日水曜日

サザン・ソウルの至宝~George Jackson

Artist:ジョージ・ジャクソン
Album:In Memphis 1972-77
Song:How Can I Get Next To You

久しぶりに、サザン・ソウルを取りあげたいと思います。アメリカ南部は「音楽のるつぼ」と呼ばれ、そこからブルース、ジャズ、ゴスペルが生まれ、さらにそれらが、融合してR&RやR&Bへ発展していきました。1950年後半から1960年代にかけて、ラジオなどの普及により、それらを媒体として、レコードをセールスするという、音楽のビジネスが成立するようになりました。

「デッカ」「コロムビア」「RCAビクター」「キャピトル」「MGM」「マーキュリー」などのメジャー・レーベルのみならず、「俺たちも一旗揚げよう!」と各地に、インデペンダント・レーベル(独立した自主制作レコード会社)がタケノコのように、生まれました。そのようなインデペンダント・レーベルは、それぞれのスタジオを所有し、そこで録音する場合もありましたが、腕利きのミュージシャンを抱えているスタジオと契約を結び、レコーディングすることも多かったようです。南部もその例外ではなく、有名なスタジオが沢山ありました。代表的なものでは、テネシー州メンフィスの、GoldwaxやHiのスタジオ,そして映画ブルース・ブラザーズでもお馴染みのバンド、ブッカーT&MG'sを擁してたStax。ナッシュビルにはアメリカン・スタジオ。ブログでも取りあげましたダン・ペンのいたアラバマ州のマッスルショールズのフェイム・スタジオ(詳しくは→2010年1月27日~サザン・ソウルの断片~Dan Pennを参照)。テネシー州ジャクソンのマラコ・スタジオなどが特に有名です。
南部のソウル・シンガーにはゴスペル素養が元々あったため、その歌い方にゴスペルが色濃く反映されていました。絞り出すように、そして時にはシャウトするヴォーカルは魂を揺さぶるほどの感動を与えたため、「Deep Soul」と呼ばれ特に南部のサザン・ソウルはその代表格となりました。オーティス・レディング 、ウィルソン・ピケット、ルーファス・トーマス、オーティス・クレイ、アーサー・コンレイ 、O.V.ライト、アル・グリーン、スペンサー・ウィギンス、ジェームズ・カー、パーシー・スレッジ、キャンディ・ステイトン、ローラ・リーなどが主なアーティストですが。南部のスタジオでレコーディングしたアレサ・フランクリンやエタ・ジェームスもサザン・ソウルを代表するシンガーと言えるかもしれません。
インデペンダント・レーベルからのシングル・ヒットが続くと、その先にはメジャー・レーベルとの契約。そしてLPの制作という道が開かれました。だたし、そのような、成功への道を歩いたアーティストはほんの一握りで、南部のインデペンダント・レーベルを渡り歩きながらシングルをリリースする方が多かったようです。そのため、比較的有名なアーティストに関しては、LP、CDなどいつも入手できますが、音源がシングルでしか入手できないものは、その筋の方々(?)には評価は高いものの、幻のミュージシャンと呼ばれる人達も少なくありませんでした

今回、紹介するジョージ・ジャクソン(George Jackson)もそんなひとりです。ヴォーカリストとしてより、サザン・ソウルのソング・ライターとしての評価が高いようですが、シングルの音源しかなく、そのシングルを入手するのが難しいため、聞きたくても聞けないという状態でした。そんな中、UKのKent・レーベルがやってくれました。(ここのレーベルはほんといい仕事しています。イギリスの人達は、音楽に対して愛情がありますね。そしてお国柄か、いいものは後世に残すことを使命としているところがあります。こういう所がほんとうの文化だと思います。日本の音楽業界も見習う必要があります。)
そんなわけで、George Jacksonの1972-1977のメンフィス時代のシングルを一枚のCDとしてリリースしてくれたお陰で、やっと幻とよばれる音源をまとめて聞けるようになりました。いわゆるサザン・ソウルの範疇からすると、絞り出すようなシャウトもないし、ちょっとソフトすぎる歌い方なんで他のサザン・ソウルのシンガーと比べると、物足りないという意見もあるでしょうが、その静かな歌い方が、かえって何か、せつなさを醸し出して、いい味出しているんです。おそらく、その頃の黒人のヴォーカリストの誰もが憧れたサム・クックの影響もあったと思われます。
まさに「サザン・ソウルの隠された至宝」そんな感じの一枚です。


(”How Can I Get Next To You?”〜ボビー・ウォマック、アル・グリーン、ジョニー・テイラー、JB、ルーファス・トーマス、マーヴィン・ゲイの名前&曲名が歌詞に織り込まれてます。)


(”Aretha, Sing One For Me”〜アレサ・フランクリンのライヴ・ショーをモチーフにした歌詞になっていて、曲の後半には、「I Never Loved Anyone Like I Love You」、「Respect」などアレサの名唱で知られる楽曲が7曲も歌詞に登場してます。)

2010年9月23日木曜日

旅に出よう~スチョリ

Artist:スチョリ
Album:優しい時間
Song:旅に出よう

本日、休日。のんびりした朝。今日あたりからやっと秋の気配が漂いはじめました。今年の秋は短いそうで、一気に冬に突入するとか。短い秋を満喫するには旅に出てみるのもいいかもしれません。のんびり温泉にでも入って、夏の疲れををとるなんてのが、正しい秋の過ごし方だと思いますが、現実はそういうわけにもいきません。そんなわけで、音楽だけでもちょっとした旅行気分に浸れるこんな曲はどうでしょう。
スチョリさんは、前から大好きなだったラリーパパ&カーネギーママという素敵なネーミングのアメリカン・ルーツ・ロック・バンドのキーボード。はっぴいえんどの香りのする懐かしいサウンドで、すでに良質な4枚のアルバムをリリースしています。残念ながら2006年にグループを脱退。ソロとして活動を始め、2010年にこのファーストアルバムをリリースしました。70年代のSSWを思わせるメロディーとやさしい歌声に聞いたとたん虜になってしまいました。この力のぬけ具合がこの季節にはぴったりです。

ところで、今回は個人的な宣伝をさせて下さい。このブログの右端のコーナーにも掲載しておりますが、おもに久留米で活動しております浪夢ですが、前からずーっと、やりたかった、私のふるさとでのLiveを行うことになりました。
今回のテーマは自分達の言葉で、自分達の音楽を伝えること、世界に一つしかないオリジナル・ソングのLiveにしようと思っています。

浪夢Live in 島原~オリジナル・アコーステック・ソングのひととき
日時:10月24日(日)
時間:午後1:00開場、1:30開演
場所:長崎県南島原市西有家町須川493-3  西有家町公民館カムス・ホール

当日は我々、浪夢の他にも、久留米でいつも一緒に活動しております練習よりも何故か酒宴の方が盛り上がる音楽愛好会Take 1のメンバーも出演してくれます。
筑後の吟遊詩人~SINOGU君。圧倒的なヴォーカルで歌われるオリジナル・ソングを絶妙なバンド・アンサンブルで聞かせてくれる~ing。30年以上前から一緒にやっていてメンバーの人となりがそのサウンドににじみ出ている大人のバンド~Flag Fieldなど、素敵なコンサートになりそうです。
小浜温泉や雲仙などの温泉を巡りながら、日曜日の午後に音楽を、そんな素敵な旅に出てみませんか。



2010年9月14日火曜日

夏の終わりに~Robin Ward


Artist:ロビン・ワード
Album:Wonderful Summer
Song:Wonderful Summer

うだるような暑さの夏も、そろそろ終わろうとしております。とはいえ、まだまだ秋の足音は聞こえてきませんが、朝晩の風には少し涼しさを感じます。

毎年、「夏の終わり」に聞きたくなるのが、ロビン・ワードの歌う、甘ずっぱくて、懐かしい”Wonderful Summer”。
60年代の古き良きアメリカのカリフォルニアの海風と波の音を届けてくれる極上のティーン・ポップの1曲です。

実はこの曲にはちょっとした逸話があります。1963年に、この曲の作曲者でもありアレンジャーでもあるペリー・ボトキンJr.は他の歌手に歌わせるために、この曲のDemoをあるスタジオ・ミュージシャンに歌わせました。Demoのその出来映えがあまりにも素晴らしかったので、そのままリリースことになります。その女性スタジオ・ミュージシャンはジャッキー・ワード(Jackie Ward)と名乗っていました。デビューするにあたり自分の娘の名前”ロビン”を拝借しロビン・ワード(Robin Ward)としてリリースします。そして見事スマッシュ・ヒットを記録します。
そのころ21才で娘さんがいるとは思えないような、そのキュートで無邪気な声はきらびやかな夏の終わりにこそ、ふさわしい気がします。
その後、数枚のシングルを出しますが、あまりヒットせずに、ティーン・ポップの女性歌手としてのキャリアは終わってしまいます。

しかし、ロビン・ワードにはもう一曲、ビーチ・ボーイズ・フリークとしては忘れてはならない”In His Car”という曲があります。この曲は実はBeach Boysの”In My Room"のアンサーソングなのです。
こういう、しゃれっ気のある、音楽での遊びが最近めっきり少なくなりました。

その後ロビンは80年代にはビリー・ヴォーン楽団のシンガーとして、来日したこともあるようですが、表舞台に立つことはありませんでした。そのへんのことは長門さんのブログに詳しいですので興味のある方はコチラを。→http://recomints.com/c/magazine/b_n/nagato_080815.html

ロビン・ワード”Wonderful Summer”~人もまばらのBeachに沈んでいく夕陽。終わる夏を惜しむようにそれを見つめるふたり~人生のうえでもそろそろ黄昏れてきた、おじさんにとっては、そんな青春の頃のセピア色のスナップ写真をみた時のような懐かしさと甘酸っぱい記憶を呼び起こしてくれる永遠のサマー・ソングなのです。

(深いエコーと波の音〜ロビン・ワード”Wonderful Summer”~永遠の夏の歌)

(Beach Boys "In My Room"のアンサーソング、ロビン・ワード”In His Car")

2010年9月9日木曜日

モーズ・アリソンに捧ぐ~Ben Sidren,Goegie Fame


Artist:ベン・シドラン、ジョージ・フェイム
Album:Tell Me Something:The Song Of Mose Allison
Song:Back On The Corner

モーズ・アリソン(Mose Allison)〜ちょっと小粋でイナセなジャズ・ピアノ弾き。
1927年、アメリカはミシシッピ生まれですから御年83歳。1950年ごろからジャズ・ピアニストとして本格的な活動を始めます。フィル・ウッズのコンボでのプレイが有名ですが、ジャズ・ピアニストとして活躍する一方で、コンポーザーとして沢山の曲を残しており、「ジャズ界のウィリアム・フォークナー」と称されています。その作風はジャズ寄りではなくどっちかというと、ブルースやR&Bに近いため、ロック・ミュージシャンにカヴァーされることが多いようです。
クラプトン在籍のヤードバーズやジョン・メイオールもカヴァーしてますし、一番有名なのはザ・フーがライヴの定番としていた”ヤング・マン・ブルース”も彼の曲です。その他、影響を受けたアーティストはローリング・ストーンズ、レオン・ラッセル、エルビス・コステロなど多数。
そして、その演奏やヴォーカルのスタイルを受け継いでいるのが、ベン・シドランとジョージ・フェイムです。ベン・シドランもジャズピアニストというより、ロックとジャズの中間で70年代にブルドック・レーベルからデビュー。小粋にスイングするピアノ。ヘタうまな味のあるヴォーカルはまさにモーズ・アリソンのスタイルです。ピアニストでありながら博士号をもった哲学者でもあり”Dr.ジャズ”の愛称の如く、有名な「ジャズおたく」でもあります。先月紹介したクレモンティーヌのアルバムなどのプロデューサーとしても有名です。
一方、ジョージ・フェイムは60年代のロンドン・モッズシーンを代表するヴォーカリスト&オルガン奏者。61年の末から、ジョージー・フェイム&ザ・ブルー・フレイムズとして本格的に活動します。ソーホー地区にあった伝説のフラミンゴ・クラブに出入りするようになった彼らは、やがてその店の看板的存在として脚光を浴びるようになりました。いわゆるモッズ・R&B・デイズの始まりです。同時代の英米シンガー・ソングライターたちの作品を取り上げた71年のアルバム『ゴーイング・ホーム』や、元アニマルズのアラン・プライスと共同名義で作った『フェイム・アンド・プライス』(71年)などが有名です。80年代も終ろうとしていた頃。60年代から親交があったという英国きっての偉大なるヴォーカリスト&ソングライターであるヴァン・モリソンと邂逅を果たし、ヴァンのバンドでキーボード奏者として、バンド・マスターとして活躍しました。そんな中89年ツアー先のオーストラリアのパースでフェイムの共通の友人を通じフェイムとベン・シドランが出会います。意気投合した2人は敬愛するモーズ・アリソンの作品集をヴァン・モリソンも加え3人でつくることになり1996年にこのアルバム“Tell Me Something”リリースしました。
アルバム全編にわたってブルースとR&Bのテイスト のする、まさに極上の「大人のアルバム」に仕上がっています。いいですね、この感じ。お酒のお供に是非どうぞ。

("Back On The Corner" by Ben Sidren,Goegie Fame)

(ベン・シドラン、ジョージ・フェイムの2人のヒップなステージ。これはレイ・チャールズの作”It Should Have Been Me”。楽しんでますね。)