2015年2月10日火曜日

音のコラム:コーラスの変遷


2010年2月27日土曜日〜オープン・ハーモニー~町支寛二の記事でコーラスのことを取り上げました。今回は初の試みで、ある曲をクローズ・ハーモニーとオープン・ハーモニーでどう違うのかを実際に聞きながら検証してみたいと思います。

クローズ・ハーモニーの1つのスタイルとして、バーバーショップ・ハーモニーがあります。「バーバーショップ」は、その言葉のとおり、「床屋さん」の意味です。19世紀後半~20世紀初頭、ラジオやテレビが無かったこの時代には、町の社交場だった床屋さんに一日の仕事が終った男たちが集まって来ました。そこで、数人で歌い、コーラスを楽しむようになります。


この絵はアメリカの新聞「サタデイ・イーヴニング・ポスト」に挿絵を描いていた有名なノーマン・ロックウエルの「Barbershop Quartet」という作品です。4人の楽しそうなコーラスが聞こえてきそうです。 この時代は1オクターブのなかに4声が重なったコーラスいわゆるクローズ・ハーモニーの時代でした。



では実際の音を聞いてみましょう。課題曲は有名な「Graduation Day」です。


1)クローズ・ハーモニー〜Arbors
1960年代に活躍した2組の双子のグループ、アーバーズのヴァージョンで1オクターブの範囲でのハーモニー。いわゆるクローズ・ハーモニーの響きです。


2)クローズ・ハーモニーとオープン・ハーモニーの中間〜Lettermen
日本でも人気のあったレターメンのヴァージョン、最初はクローズ・ハーモニーですが最後のサビの部分はオープン・ハーモニーで歌われています。



3)オープン・ハーモニー〜Four Freshmen,Beach Boys
オープン・ハーモニーは1オクターブの中に収まりきれないハーモニー。つまり主旋律がかなり高い方に移動したり、さらにその上をハモるため、より広い音の拡がりを感じます。またJazzコーラス特有の6-9thの音を多用していまので心地よいオシャレな感じに聞こえるんですね。フォー・フレッシュマンのオープン・ハーモニーがコーラスの歴史にとって、まさに革命的な出来事だったことがわかりますね。

最後の大好きなBeach Boysのヴァージョンをどうぞ、いかにBrian Wilsonがフォー・フレッシュマンのコーラスを研究し、自分のものにしていたかがよくわかります。
もし、透き通るようなブライアンのファルセットがなければ、Beach Boysのこの高度なコーラスは完成されなかった。そんな気がします。



いかがでしたか、クローズ・ハーモニーとオープン・ハーモニーの違いがわかっていただけたでしょうか。よく日本人は3度のコーラスになれているため、この6−9度のハーモニーは馴染みにくいといわれています。最近はア・カペラもブームで、よくTVでコンテストみたなことをやっていますが、「おお、これは」というハモにはなかなかお目にかかれませんね。この6−9度のオープン・ハーモニーを使いこなせるようになるということがキー・ポイントだということでしょう。