2010年5月27日木曜日

子供の頃の夢〜Sammy Davis Jr.

















Artist:サミー・デイヴィスJr.

Album:Yes I Can! The Sammy Davis Jr. Story
Song:The Candy Man

日の出を1個 取って来て

それを朝露でまぶして
チョコレートでつつんで
そんな奇蹟を1つか2つ起こせるのは誰

虹を1個 取って来て
それをため息で包んで
太陽に浸して
いかしたレモン・パイを作ることができるのは誰

明日を運んできて
それを夢に浸して
悲しみを切り離して
クリームのいっぱいついたお菓子を集められるのは誰

キャンディ・マンさ
キャンディ・マンならできるんだ
キャンディ・マンはね
世界を愛と混ぜ合わせ
おいしくすることができるからね

こんな心暖まる、「子供の頃の夢」を歌ったサミー・デイヴィスJr.の「陽気なキャンディ・マン(The Candy Man)」は1971年ビルボードでNo.1ヒットになった曲です。
元々はロアルド・ダールという人が書いた児童文学「チャーリとチョコレート工場(Charlie And the Chocolate Factory)」を映画化した「夢のチョコレート工場」の挿入歌で映画では菓子屋の店主ビル役のオードレイ・ウッズが歌っています。
しかしこの映画は当時、日本では未公開だったようで、この曲の方が有名になってしまいました。
この映画は2005年にジョニー・デップ主演で「チャーリーとチョコレート工場」としてリメイクされましたのでご存じの方も多いと思います。(CGファンタジーとしては新しいのかもしれませんが、ちょっとオドロオドロした雰囲気で子供が喜びそうな映画ではありませんでしたね。)
作者は007シリーズでシャーリー・バッシーが歌った「ゴールド・フィンガー」などのミュージカルやサントラ盤を手がけているLeslie Bricusse(レスリー・ブリカッセ)とAnthony Newley(アンソニー・ニューリー)のコンビです。Anthony Newleyという人は歌手でもあり俳優。はたまたソングライターと多彩な才能をもった人で自らも素敵なアルバムを何枚かリリースしています。
 Sammy Davis Jr.については映画、TVなどでご存じでしょう。特に我々の時代は「サントリー・ホワイト」のチンチカ、チンチカとグラスを叩いてひとこと"Oh! Dynamaite!"ーあのCMが印象に残っています。
 Sammy Davis Jr.は父と叔父が芸人ボードヴィル・ショーの旅回りをしていた関係で3歳という幼い頃から舞台に立って以来タップや歌や形態模写など達者な芸を披露していました。タップダンスは1984年の映画「The Cotton Club(コットン・クラブ)」に出演したGregory Hines(グレゴリー・ハインズ)が崇拝するほどの腕前だったそうです。その後Frank Sinatra(フランク・シナトラ)やDean Martin(ディーン・マーティン)とRat Pack(シナトラ一家)を組み、映画、TVなどに出演。一流の黒人エンターテイナーとして認められるようになりました。そんな彼にでさえ1960年代になっても、人種差別に晒されていて自分の歌っているホテルにさえ泊まれないなどの屈辱を味わっています。(この辺のことは自伝「ミスター・ワンダフル」(文藝春秋社)をご一読を、白人の支持を得るために、いかに差別をバネにして自分の才能だけを頼りに生きぬいてきたか、その人生はサッチモとかさなっているような気がします。)残念ながら1990年没。
 ほんとうは、本格的な大人の歌でNo.1ヒットをものにしたかったかもしれませんが、夢を売り歩く陽気な「キャンディ・マン」はSammy Davis Jr.じゃないとNo.1にはなれなかった気がします。

("The Candy Man" by Sammy Davis Jr.)


(これがオリジナルの映画の挿入歌)

2010年5月17日月曜日

五月の青空~佐藤 博

Artist:佐藤”Gwan”博
Album:青空
Song:青空

久しぶりに邦盤ものをご紹介いたします。
五月に入ってても、寒い日が続いたりして、澄んだ皐月の空というイメージにはほど遠い天気でしたが、本日よりやっと五月らしい青空が拝めるようになりました。
(というか一挙に夏日となっております。あ~暑い)
澄んだ「青空」を眺めると、つい思い出すのがこの曲でございます。

俳優でもあり、SSWとしても良質なアルバムをリリースしております佐藤博さんの作品。佐藤博さんには同姓同名のキーボード奏者の方がいまして紛らわしいので、愛称の”ガンさん”を付けて、佐藤”Gwan”博と表記されることが多いようです。

この曲が収録されている同名のタイトルのついたアルバム「青空」は1978年にベルウッドレーベルから発売されました。その当時、一斉を風靡していた、ニュー・ミュージック風(ああ懐かしいな~)なアレンジで、特にこの曲のバッキングにおけるキーボードのアレンジが秀逸です。(シンセの音が突き抜けるような青空の雰囲気をうまく表現していると思います。)
アレンジャーは坂本龍一”教授”。今では世界の"SAKAMOTO"の名をほしいままにしておりますが、このアルバムにおける数曲のアレンジはアレンジャーとしての坂本龍一の初期の仕事の中でも、記憶されるべきものだと思います。
(大貫妙子さんのファースト「グレイスカイズ」が1976年ですから、2年後ですね。)

このアルバム「青空」が佐藤”Gawn”博さんのファースト・アルバムなのですが、その後セカンド「星空」までなんと25年の歳月が流れています。その25年間における音楽に対するスタンスは変わっていないようで、つねにマイペースでライヴなどをコツコツ続けられているようです。本質を見抜く大人の落ち着きと、素直に感動を表す少年の心をもって、柔らかくすべての人間や動植物を見つめる視点で書かれた歌詞はちょっととぼけたような朴訥な歌と相まって、独特の世界観を醸し出しています。この歌詞の世界に魅せられたファンは多いようで、私もその一人です。
他に「南風」「忘れ物」「ことば」など好きな曲がありますが、なんといってもレイ・ブラッドベリのSFファンタジーの傑作「たんぽぽのお酒」を下敷きにした同名の曲も捨てがたい魅力があります。セカンド「星空」でも違ったアレンジでこの「たんぽぽのお酒」を再演していますので、好きなファンからの要望が多かったのかもしれません。

最近の世知辛い世の中、ほっと一息つきたいときなど佐藤”Gawn”博さんのさりげない言葉で癒されます。
最後になりましたが、初春か初秋の休日の香りのするジャケ写真も大のお気に入りです。

(”青空” 佐藤”Gwan”博)

(”ことば” 佐藤”Gwan”博 これも坂本教授のアレンジ)

(大好きな”たんぽぽのお酒”これがGwanさんのLiveの雰囲気です。)