2011年6月30日木曜日

あれから40年〜Marvin Gaye

Artist:マーヴィン・ゲイ
Song:Mercy Mercy Me (The Ecology)
Album:What's Going On

洋楽好きなら、誰もが知っているこのアルバム、この度「40周年記念 スーパー・デラックス・エディション 」なるものが、発売されました。仕様はCD2枚とアナログ盤1枚という豪華盤。2011年のリマスターで未発表トラックも満載(30周年盤の時のトラックに新たに数曲加えられています。)さらにアナログ盤は所謂、デトロイト・ミックス仕様(LAで後に音が加えられる前の原型)になっているもようです。(興味のある方はこちら
1971年のリリースですから、かれこれ40年が経つんですね、このアルバムが発売されて・・・。

 このブログの「2011年2月9日〜魂のキャッチ・ボール」にも書きましたが、後の「ニューソウル」を高らかに宣言した歴史的名盤であることは誰もが認めるところですが、モータウンというレーベルの歴史の流れの中ではかなり異質なアルバムだったと思います。

モータウン(Motown;Motown Records)は、1959年ベリー・ゴーディ・Jrによってデトロイトで設立されたレコードレーベルです。
「黒人向けのR&Bだけでなく広く白人層にもアピールできる音楽を作ろう」と徹底的に音楽の制作を研究し、レコードができる過程を、分業化し、それぞれの分野に高い能力をもったスタッフを配置して、「ヒット曲の製造工場」を作り上げたのでした。作詞・作曲チームには、ホーランド=ドジャー=ホーランド(H-D-H)の3人を筆頭にスモーキー・ロビンソン、ノーマン・ホイットフィールド、アシュフォード&シンプソンらが控えていました。レコーディングも「ファンク・ブラザーズ」といわれるモータウンのセッションには欠かせないレギュラー・メンバーで行われるようになりました。ピアノはアール・ヴァン・ダイク、ベースはジェイムズ(ジェイミー)・ジェマーソン、ドラムスはベニー・ベンジャミン。特にベースのジェイムズ・ジェマーソンとドラムスのベニー・ベンジャミンが作り出す強力なリズムは、我々が思い浮かべる「モータウン」の音そのものでした。
スモーキー・ロビンソン(ミラクルズ)、ダイアナ・ロス(シュープリームス)、テンプテーションズ、マーヴィン・ゲイ、フォー・トップス、スティーヴィー・ワンダー、グラディス・ナイト&ピップス、マイケル・ジャクソン(ジャクソン5)、ライオネル・リッチー(コモドアーズ)、メアリー・ウェルズ、マーサ&ヴァンデラス、などなどアーティストもキラ星の如く。
そして、「アメリカのヒット曲が生まれる町」Hitsville U.S.Aとベリー・ゴーディが命名したように1960年代に黄金期をむかえます。

マーヴィン・ゲイもそれまで、すぐれたアルバムを作り続けモータウンの看板スターではありましたが、いつしか、作家達の作るLove Songを只歌うことにだんだん疑問を感じてくるようになりました。「自分の作りたいものをレーベルの制約をうけることなく自由に創作したい」彼はその権利を「モータウン」の中で初めて勝ち得たアーティストでもありました。

 デュエットとしてこれ以上の相手はいないと思っていたタミー・テレルが脳腫瘍で70年に亡くなったことの悲しみ、父との長年の確執、弟のベトナムでの体験、いまだ貧困にあえぐ同胞達、経済を優先するばかりに破壊されていく自然、公害問題、さらなる環境破壊を引き起こすかもしれない原発。先行きの判らない混沌としたアメリカ社会。彼の中の芽生えていた疑問は非常に個人的なものだったかもしれませんが彼はそれらを歌いたかったのだと思います。そして出来上がったものは、その時代だけの流行ではなく、普遍的な意味をもったコンセプト・アルバムとなりました。

 発売当初、いままでの「モータウン」の路線と大きくかけ離れているこのアルバムをリリースすることにベリー・ゴーディは難色を示したと言われています。それほど内容的にも特異なアルバムだったのです。音楽的にも今までの「モータウン・サウンド」とは違っていました。そのサウンドは今までのR&Bの範疇には収まりきれないものでした。JazzやDoo-Wapなどの様々な音楽を消化し作り出された都会的な音楽ーそれは都市で生活するようななった新しい黒人達のライフ・スタイルを象徴するサウンドでした。
発売されるやいなや全米で200万枚を売り上げ、ソウルチャートで1位、ポップスチャートでも6位を記録する「モータウンの70年代」を代表するアルバムとなりました。その後のスティービー・ワンダーなどの「モータウン」におけるアルバム制作のスタイルを切り開くことにもなりました。
 皮肉なことに、このことは、徹底的に分業化され、管理された「ヒット曲の製造工場」としての「モータウン」の崩壊でもありました。「モータウン」はすぐれた才能をもったアーティスト達が作るレコードを、ただ販売する1レコード・レーベルに過ぎなくなってしまいました。
 また、このアルバムは「モータウン」で初めて、レコーディングのミュージシャン達の名前がクレジットされたアルバムでもありました。つまり、会社側からミュージシャンの誇りや権利を取り戻したとも言えると思います。

このアルバムは1曲をだけを取り上げるべきものではないと思いますが、
この”Mercy Mercy Me (The Ecology)は副題のとおり、今我々が直面している環境問題をすでに71年の時点で問題にしているという点で、非常に先見的な曲だと思います。未だ収束しない「日本の原発問題」をマーヴィン・ゲイが生きていたら何と言ったでしょうか。「40年もの間、いったい何を考え、何をしていたんだ。」
きっとそのツケを今、我々は払わなければならないのかもしれません。

(Mercy Mercy Me (The Ecology) by Marvin Gaye)

Mercy Mercy Me(The Ecology)
ああ、どうかどうかお許しください
そう、すべては以前とは変わり果ててしまった
なんてことだ
あの広い青空はどこへ行ってしまったんだ?
毒が、風のように吹いてくる
北の地から、東から、南から、そして海からも


ああ、どうかどうかお許しください
そう、すべては以前とは変わり果ててしまった
なんてことだ
大海原や僕らの海の上に石油は流されている
魚も水銀に晒されている


ああ、どうかどうかお許しください
そう、すべては以前とは変わり果ててしまった
なんてことだ
大地と空に放射能が溢れ
近くに住んでいた動物たちと鳥たちは死んでいる


ああ、どうかどうかお許しください
そう、すべては以前とは変わり果ててしまった
人が溢れているこの大地は一体どうしたというんだ?
あとどれくらい、大地は人間からの虐待に耐えられる?

私の最愛の主よ
私の最愛の主よ
私の最愛の主よ


(追伸)
 前回、お知らせしておりました、「島原 酒蔵ほろ酔いコンサート」沢山のお客さんに来ていただき大盛況でした。酒蔵という素晴らしい舞台もさることながら、前回の南島原でもコンサートもそうでしたが来ていただいたお客さんがとてもあたたかく本当にいいLiveができたと自負しております。出演者をはじめ音響、照明、駐車場の整理をしてくれたスタッフ、関係者の皆さん、雑事に奔走してくれた家族にこの場を借りて感謝いたします

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