2011年6月14日火曜日

初心~Laura Nyro

Artist:ローラ・ニーロ
Song:It's Gonna Take A Miracle 
Album:Gonna Take a Miracle

 ついに、今回でこのブログも100号の節目を迎えることができました。これもいままで「趣味趣味音盤探検隊」を支えてくださった皆様のお陰です。とくにブログに書くことを勧めてくれた相棒のY氏には感謝しております。今後も細々と続けていこうと思っていますので、今まで同様、ご支援、宜しくお願いします。

 さて、記念すべき100号目に誰を取りあげようかと悩みましたが、ここは「初心に帰って」みることも大事だと思い、ブログ第1号で書かせてもらったLaura Nyroを再度取りあげることにいたしました。私にとって、「洋楽」というまったく未知の世界へ誘ってくれた人でもあり、彼女の音楽性がある意味、その後の人生の音楽的な嗜好を決定したと言っても過言ではないかもしれません。
前回ではプロフィールを書いてなかったので、ここで簡単に紹介しておきます。

 1947年10月18日、ニューヨーク市ブロンクスに生まれる。本名はローラ・ナイグロ(LAURA NIGRO)。父は米軍バンドのトランペッター。母も芸術や音楽が大好きだったようで、そんな父母の影響もあり(ちなみジャズ・シンガーのヘレン・メリルは ローラの叔母に当たる。)、幼い頃からジャズ、ドゥーワップ、ブリル・ビルディング、シカゴ・ソウル、モータウン等を聴き込み、14才頃には街中のプエルトリコのハーモニー・グループと一緒に地下鉄構内で歌っていた。そして、ジャニス・イアンと同じハイスクール・オブ・ミュージック&アーツに在学中の17歳の頃には名曲「And When I Die」や「Wedding Bell Blues」をすでに書き上げていた。かなり早熟な少女だったようです。
(そういえば、ジャニス・イアンも弱冠15歳にしてシングル「Society's Child」でデビューしてますので、たぶんお互い意識していたのかもしれません。そう考えると”At Seventeen”の歌詞の内容に関してもローラも同級生だったんだと思うと、非常に興味深いものがあります。)

 そんなローラの早熟の才能にいち早く気付いたミルト・オクンのプロデュースにより、1966年にヴァーヴ・レコードからシングル「Wedding Bell Blues」でデビュー。翌67年にサンフランシスコのクラブ、ハングリー・アイで初めてプロとしてステージに立つ。同年、サイケデリックの祭典となったモンタレー・ポップ・フェスティヴァルのステージにも立ったが、その出来を巡っては大きな反響が巻き起こっている。(実はこのステージでブーイングを浴びて、それ以後、ステージが嫌いになったという説がありましたが、フェスの模様を収めたDVDを検証してみるとブーイングと思われた音は賛辞の口笛だったことがわかります。)
デビュー曲を含むファースト・アルバムはヒットには至らなかったものの、このアルバムの中の楽曲を後にフィフス・ディメンション、ブラッド・スウェット&ティアーズ、スリー・ドッグ・ナイト、バーブラ・ストライサンドらが取り上げ、いずれも大ヒットになったことから、ローラは一躍注目のソングライターになりました。その後,コロムビア移籍後、68年に「イーライと13番目の懺悔」そして69年には「ニューヨーク・テンダベリー」をリリースします。特に「ニューヨーク・テンダベリー」はSoulのみならずJazzの要素を取り入れ、ローラ独自の音楽性を追求した作品に仕上がっており、深夜ヘッドホンで聞いていたりすると、どこかへもっていかれそうになるほどのインパクトがありました。

そして1971年に発表されたのが、パティ・ラベルが率いるザ・ラベルをフューチャーした、この「ゴナ・テイク・ア・ミラクル」。十代から歌い続けていた、自分のバック・グラウンドであったR&BやSoulの曲達をリスペクトしたカヴァー集。プロデュースは後にフィリー・ソウルで一世を風靡するギャンブル&ハフ。バックも後にフィラデルフィア・サウンドを支えた生え抜きのミュージシャン達所謂、MFSB(Mother Father Sister Brother)という音楽集団です。そしてレコーディング・スタジオは華麗なフィリーソウルの名作の数々を生んだシグマスタジオなんです。この先見性にも脱帽です。
ここで収録曲を簡単に紹介します。

A面
1.I Met Him On A Sunday (S.Owens/D.Coley/A.Harris/B.Lee)1958
ニュージャージー出身のガール・グループ The Shirelles の作品。ストリート・コーナー・ハーモニーの雰囲気が漂うオープニング。気分はすでにブロンクスの街角へ。

2.The Bells (I.Bristol/G.Gaye/M.Gaye/E.Stover)1970(全米12位)
 モータウンに在籍していたデトロイトのグループ、 The Originalsのヒット曲。マーヴィン・ゲイが名盤『ホワッツ・ゴーイング・オン』の制作とほぼ同時期にプロデュースしたそうですから、その当時は結構、新しい曲だったと思われます。

3.Monkey Time (C.Mayfield)1963~Dancing In The Street  (W.Stevenson/M.Gaye/I.Hunter)1964(全米2位)
前半は Curtis Mayfield の曲で Major Lance のヒット曲。後半は Martha & The Vandellas のあまりにも有名な大ヒット曲。暴動を誘発すると曲解されて放送禁止になった逸話は有名。多分、ローラも10代にモータウンやノーザン・ソウルに夢中になっていたと思われます。ローラとザ・ラベルのソウルフルな掛け合いが実に楽しそうです。

4.Desiree (L.Cooper/C.Johnson)1957
ニューヨークのドゥーワップ・グループ、The Charts の名曲。スローなバラードで、冬、ブロンクスのアパートの窓を開けると部屋に入り込んでくる、街の冷気のような曲。大好きな曲です。

5,You've Really Got A Hold On Me (W.Robinson)1963(全米8位)
Smokey Robinson & The Miracles のソウル・クラシック。The Beatles のカヴァーでも有名。オリジナルに負けないコーラスは絶品。

B面
1.Spanish Harlem (J.Leiber/P.Spector)1961(全米10位)
 The Driftersに在籍していた Ben E.King のソロの最初のヒット曲。同じ71年にアレサ・フランクリンも大ヒット(全米2位)させている。日本では山下達郎氏が「On The Street Corner」で取り上げたことで有名。

2.Jimmy Mack (E.Holland/B.Holland/L.Dozier)1967(全米10位)
これも Martha & The Vandellas の大ヒット曲。モータウン・サウンドはティーンエイジだったローラに多大な影響を与えていたようです。85年にはシーナ・イーストンもカヴァー(全米65位)

3.The Wind (N.Strong/B.Edwards/W.Hunter/ Q.Eubanks/J.Gutierrez)1960
「従兄弟から聴かされたのを覚えているわ。私が12歳の時よ。初期のドゥーワップの中でも美しい曲の一つ。聴いた瞬間、ストレートに私の心に届いたの。」と語られた名曲。彼女が初めて買ったレコードでもあるようです。オリジナルはデトロイトの黒人ヴォーカル・グループ、Nolan Strong & The Diablos の美しい曲です。これも、ローラのファンでもある達郎氏が「On The Street Corner」で取りあげてました。

4.Nowhere To Run (E.Holland/B.Holland/ L.Dozier)1965(全米8位)
これも Martha & The Vandellas の曲。モータウンの中でも特にこのグループがお気に入りだったようです。

5.It's Gonna Take A Miracle (T.Randazzo/ B.Weinstein/L.Stallman)1965(全米41位)
オリジナルはリトル・アンソニー&ザ・インペリアルズのプロデューサー、テディー・ランダッツォ(Teddy Randazzo)がその女性版として手掛けたThe Royalettes。作曲も手がけています。後半にかけての盛り上がりが感動的なラストを飾ります。
今回はこれを取り上げさせていただきました。

ローラのアルバムの中では、1曲もオリジナル曲がないという異色のアルバムです。
確か達郎さんが言ってた思いますが、ローラはソング・ライターとしての評価が高く(おそらく、ローラの曲が他のアーティストによってヒットしたからだと思います。)シンガーとしてはイマイチ評価されていないようですが、このアルバムなどを聞くと、白人でこんなにソウルフルに歌える人はそうはいないんじゃないかと思います。

その後、母の死、結婚、離婚、未婚の出産を経て、ローラのプライヴェートは大きく混乱しながらも、熱烈なファンにとっては目の離せない作品群が断続的に届けられましたが、残念ながら、1997年4月8日に卵巣ガンにより享年49才の幕を閉じた。

 こうやって100回の記念号でローラを再度、取りあげることができ、「初心」にリセットでました。今後も「膨大な音盤の森」を、彷徨つづける覚悟でございます。よろしくお願いいたします。

(" It's Gonna Take A Miracle" by Laura Nyro and Labelle)

(これがオリジナル。”It's Gonna Take A Miracle” by Royalettes )


1 件のコメント:

  1. 初めまして。
    思いっきり過去記事へのコメント、すいません。
    Moonlight Surfer さんのブログ"趣味趣味音盤探検隊 "でのLaura Nyroの記事に深く感心させられました。
    私も、Laura Nyro好きが高じて、自分のブログに彼女の記事を書いたのですが、その中で貴ブログを紹介させて頂きました。事後報告になりますが、よろしくお願いします。
    なお、記事の中でリンクも貼らせて頂きました。削除した方がよければご指摘下さい。

    時間のある時に、私のブログ「Weekend In 心は L.A.」も覗いてみて下さい。
    By Aki

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