2010年10月6日水曜日

常夏の島からの風~Kool Elevation

Artist:クール・エレヴェイション
Album:1th Impressions
Song:Falling

その国の風土(気候や歴史や文化)は音楽と連動としているとよく言われます。今や日本人のリゾート地といってもいいハワイも例外ではありません。

 ハワイアンのウクレレの響きに、伝統舞踊であるフラや、その背景に椰子の浜辺を連想するのは、音楽の伝統を継承するという歴史があったこそとも言えると思います。
しかし、ウクレレのことを調べて見ますと、その歴史は以外に新しく、一節にはポルトガル人が持ち込んだブラギーニャ(braguinha)という小さいサイズのギターが起源と言われ、1890年代に現在の形になったようです。それまではハワイには打楽器しかなく、弦楽器を19世紀の後半まで知らなかったとも言えるわけです。その音がまるで蚤(ノミ)が飛び跳ねるような音だったためハワイ語で「飛び跳ねる(lele)ノミ(ʻuku)」ウクレレ(ʻukulele)となったとか。いまや希少価値となったハワイのコアの木で作られるウクレレは高級品となっています。

 同じ時期にハワイに入ってきたギターも独自の発展を遂げました。それは、種類や形ではなく、独特の響き、チューニング法にあります。スラックキーギター (Slack-key guitar) という独特のチューニングです。基本は6弦からD-G-D-G-B-Dにあわせる所謂、オープンGチューニングで、3弦だけを半音下げ、D-G-D-F#-B-Dというチューニングになりますとマイナー曲用になります。この他にも、その家系に代々伝わるチューニングのしかたがあるらしく、いかに音楽というものを大事にしてきたかがわかります。
 
 また弾き方にも独特な方法も用いました。ギターを寝かせ左手に金属やガラスのバーを持ちそれをスライドさせて演奏する方法です。後にハワイアンがブームになるとアメリカ本国で専用の楽器にデザインされ、現在のスティール・ギターになったと言われています。その後、ハワイアンのみならず、カントリーやロックの分野の音楽にも用いられるようになりました。

自然を愛し、その恵みを神に感謝するという、至極シンプルな生活をしていた最後の楽園ハワイも1900年にはアメリカ領となり、1959年についに50番目の州としてハワイ州となります。その裏側には、ハワイ王朝の崩壊という悲しい歴史があり、運命に翻弄された、最後のプリンセス、美貌のカイウラニ(Kaʻiulani)の悲しい物語があるのですが、これに関して、また、何かの機会に・・・。

 そんなワケで、20世紀になるとアメリカの音楽がどっと流れ込んできて、トラディショナルなハワイの音楽もその影響を受けることとなります。その中でも、コンテンポラリー・ハワイ・ミュージックと呼ばれるAORやWest Coat Rockに影響を受けたハワイのアーティスト達が作った音楽が、最近、相次いでCD化されるようになりました。アメリカ本国の音楽とは違い、売らんが為の過剰なプロデュースがされておらず、メロディーも未完成な所はありますが、手作りの音には音楽を楽しくやるという等身大の姿勢が感じられ共感する所があります。そして何より、ライフ・スタイルを反映してなのか、音楽の中に海や波の音や、やわらい風を感じるとることができます。70〜80年代に有名となったKALAPANA、CECILIO & KAPONO、SEAWINDなどは、幾度もCD化され比較的手軽に聞くことができますが、自主制作され、それもハワイだけで限られた枚数しか発売されなかった、レコードも沢山ありました。この分野にも熱心な日本のリスナーがいて、以前から話題になっているものもありました。中には一枚、ん万円もするものがあり、堅気(かたぎ)の私達にはとても手が出せるものではありませでした。
 例をあげるとLemuria、Mackey Feary Band、The Aliis、The Krush、Billy Kaui、Country Comfort、 Lance Joe, Audy Kimura,Ray Gooliak,Richard Natto,などなど。そしてもっとも入手困難だった、Tender LeafやPhase 7そしてLuiなども最近、相次いでCD化されるようになりました。気軽にきけるのは喜ばしい限りですが、反面すべて期待した内容ではなく中には、レアというだけで・・・というのも正直あります。
 そんな中で逆に期待せずに聞いて、内容が予想以上によかったのが、このクール・エレヴェイションというバンドのアルバム「1th Impressions」でした。特に”Give This Love A Try"と"Falling"という2曲は印象深く、特に"Falling"はBossaを基調とした、個人的な好みのテイストでありまして、手前味噌ですが、我がバンド「浪夢」に通じる所がありました。
いずれにせよ、これらのバンドの音の隙間からは「常夏の島からの風」を感じることができます。背伸びをせず、飾らない、普段着の音楽がコンテンポラリー・ハワイ・ミュージックの魅力でもあります。

(残念ながら音源はありません)

(Kool Elevation”Perfect Day”のPV?この手作り感がなんともいえません。)



2 件のコメント:

  1. 95年とは新しいのですね。早速注文しました。Luiも聴きましたが「これがAORか?」というのが最初の印象です。もちろん悪くはなかったけど。
    それとウィンドウズ7に買い換えました。起動が早い!!

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  2. Luiはなんといってもあの美しいジャケットに目がいきますね。最初はホテルの宣伝用のレコードかとも思いましたが(笑)。どちらかというとこっちの方が好みかな。これ確かに95年作ですが、音は70年代ですね。アコギが基本になっているところがいいですね。少し、リズムがずれているところがあったりしますが、そのままリリースしてしまうところに大らかさを感じます。私は相変わらず、Mac派です。

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