2010年8月25日水曜日

奇跡~Brian Wilson
















Artist:ブライアン・ウィルソン
Album:Reimagines Gershwin
Song:The Like in I Love You

ついに、発売されました!ブライアンの新譜。感激です!唯々、涙・・・。

 1967年「ペット・サウンズ」の後、完成すれば、あの「サージェント・ペバーズ」をも凌ぐアルバムになっただろうと言われていたアルバム「Smile」。
しかし、ブライアンは精神のバランスを崩し、その重圧からついにアルバムは完成を見ることなくに幻に終わってしまいます。その断片は、その後のBeach Boysのアルバムで、パラバラには聴くことはできましたが、その全貌を正式な音源で聴くことはできませんでした。それから、実に37年の歳月が過ぎた2004年、ついにブライアンは「Smile」を完成させ、その全貌を私達に見せてくれました。「ポケット・シンフォニー」と銘打うたれるハズだったように、それは音楽による一つの叙事詩でした。完璧なトータル・アルバム。想像以上のクオリティーはその当時にリリースされていたなら、決してビートルズにも引けは取らなかったと思います。

そして、自らの失われた過去を清算するかのように「Smile」を完成させた後,2008年には「That Lucky Old Sun」をリリース。カリフォルニアで過ごした、50年~60年代のブライアンにとってのゴールデン・エイジだった想い出を慈しむかのように、その記憶を1曲、1曲に切り取って、私達に届けてくれました。
ブライアンは復活しました。まだぎこちない行動はあるにせよ、カリフォルニアの空に響きわたるあの美しいファルセットは失われてしまったにせよ、彼の頭の中にある素晴らしい音楽を、きちんと整理して、現実の音として再現することを可能にすることができるまで回復してきました。その影には、ずっとブライアンを支えてくれる固定したバンドの存在が欠かせなかったと思います。メンバー全員がブライアンと一緒に音楽を作れる喜びを、語っています。みんなブライアンのことが大好きなのです。
もし、音楽の女神(ミューズ)がいるとしたら、ブライアンに特別な才能を与えた代償として大きな試練も課しているような気がしてなりません。
そして、音楽のミューズは、今回もちょっとしたイタズラを思いつきました。その著作権の管理がビートルズよりも厳しいことで知られるジョージ(弟)&アイラ(兄)・ガーシュインの名曲達をブライアンにカヴァーさせることです。

驚くべきことに、今回のアルバムに関しては、ガーシュインの遺族から、申し出だったようで、曲の使用に関しては、ブライアンに完全な権利を与えています。
声明の中で、ジョージ・ガーシュウィンの遺族のトッド・ガーシュウィン、ジョージの兄で、曲に歌詞をつけていたアイラ・ガーシュウィンの遺族のマイケル・オーウェンは、ブライアンを作曲家として称賛し、「ガーシュウィン一族は、伝説的なミュージシャンのブライアン・ウィルソンが次のプロジェクトとしてジョージ・ガーシュウィンとアイラ・ガーシュウィンの曲集をレコーディングすると決めたことを大変嬉しく思っています。アメリカン・ミュージックはこれまでガーシュウィン兄弟からブライアン・ウィルソンに至るまで、他の者には見えないものを見ることができる人々によって前進し続けてきました。今回の作品はガーシュウィン音楽の魔法を再発見する新たな機会となることでしょう」とまで述べています。
アルバムでは、ガーシュインの代表作” Rhapsody in Blue”、”Summertime”、” 'S Wonderful”、”I Got Rhythm”、”Someone to Watch Over Me”などはもちろんのこと、1937年にガーシュインが死亡した際に残されていたという未完成曲、「The Like in I Love You」と「Nothing But Love」の2曲の楽曲を完成させるための権利まで与えられました。ついに、ガーシュインの曲をブライアンが引き継ぎ完成させるという、ファンにとっては、信じられない、「奇跡」を聴くことができました。それは、音楽のミューズが与えた才能が、誰も聴いたことがない曲に新しい息吹を吹き込んだ瞬間でした。
ありがとう。ブライアン。この「奇跡」を共有できる時代に生きていることを感謝したいと思います。

(未完成だったガーシュインの曲をブライアンが引き継ぎ完成させた「奇跡」の1曲)

(古巣のキャピトルを離れ、今回はディズニーのレコード・レーベルからのリリース、次はどんなアルバムになるのか楽しみです。)

2 件のコメント:

  1. ガーシュインのあのメロディー
    センチで、ドリーミーで、それでいてゴージャス。
    (カタカナ並べるの、好きじゃないけどここはしかたない)
    ブライアンの声で流れてきたときにはキュンとしました。

    宝物がまたひとつ増えたね。

    返信削除
  2. アルバム全体を通して、やはりコーラスワークの素晴らしさに感嘆しています。ブライアンのヴォーカルの音程も安定してきています。しかし、こんな素晴らしいアルバムなのに、悲しいことに、現在のところ、日本盤の発売の予定がないようなのです。しばらくは輸入盤でガマンします。

    返信削除