2011年8月17日水曜日

ハーモニーを求めて~Kenny Vance

Artist:ケニー・ヴァンス&ザ・プラノトーンズ
Song:For Your Precious Love
Album:Lovers Island

僕らは真剣だった
地下鉄でもホテルのロビーでも練習したものさ
ビルの出入り口に群がって
壁に向かって、ドゥーワップを歌ったものさ
僕らはエコーを求めていた。
僕らのサウンドに応えてくれるエコーをね
ハーモニーの神様に出会える場所が必要だったから
僕らはムーングロウズやハープトーンズ、
デルズの歌を歌った。
「シンシアリー」はとても高い声で歌えた
ファルセットだったけど
今にも天に届きそうだったんだ

僕らはハーモニーの神様に出会える場所を探していたんだ。

こんな素敵な歌詞を持つ”Looking For An Echo"は歌詞にあるように天に届きそうなファルセットで始まるドゥ・ワップの名曲です。
そして、映画「奇跡の歌」(Looking For An Echo)はそんなオープニングから始まります・・・。ブルックリン・ブリッジのたもと。アカペラで歌う少年達のシルエット、そしてフィンガー・スナップのリズムに合わせて聞こえてくる美しいファルセット。60年代、美しいアカペラの歌声でアメリカを席巻した伝説のドゥ・ワップ・グループ“ヴィニー&ザ・ドリーマーズ”のリード・ヴォーカル、ヴィンスもいまや50歳。一度はバンドマンとして全米トップ1の頂点に立ちながらも、ある苦い過去と共にその美しい歌声を封印してしまった。一度人生を降りてしまった不器用なミュージシャンが、同じ道を目指す息子や昔の仲間達、彼を暖かく見守る恋人や家族に支えられ再生していく感動的なストーリーです。その主人公を後押しするように全編に流れるのがこの”Looking For An Echo"でした。
劇中に流れるドゥ・ワップの名曲の数々、その吹き替えを担当したのがKenny Vance&The Planotonesでした。そして美しいファルセットで始まる”Looking For An Echo"のオリジナル・ヴォーカリストでもありました。

 Kenny Vanceはこの映画の舞台と同じニューヨークのブルックリンに1942年に生まれました。多くの少年達がそうだったようにR&Rの洗礼を受け、音楽に目覚めていきます。50年代のN,Yのブルックリンやブロンクスといった下町にはドゥ・ワップ・サウンドに心酔したそんな少年達が街角や地下鉄で歌っていたと言います。その中から黒人だけでなく、ディオン&ベルモンツ、メロウ・キングス、カプリス、エレガンス、アールズなどのイタロ系のドゥ・ワップ・グループも沢山生まれてきました。そしてローラ・ニーロ、ポール・サイモンなどのユダヤ系の若者達もハーモニーを求めて、街角で歌っていたようです。そんな情景を想像するだけでもなんだか心がウキウキしてきます。
ケニーも1959年に友人達と「ハバーライツ」というグループを結成。そのデモ・テープを聞いた、名ソングライターコンビ、ジェリー・リーバー&マイク・ストラー(Jerry Leiber and Mike Stoller)の目にとまりレコードデビューすることとなります。その後グループは「ジェイ&アメリカンズ」と改名。”She Cried (シー・クライド) ”(62年5位)、”Come A Little Bit Closer (カム・ア・リトル・ビット・クローサー)”(64年3位),"Cara, Mia (カラ・ミア)"(65年4位),"This Magic Moment (ディス・マジック・モーメント)"(69年6位)などのヒット曲を放っています。またビートルズやローリング・ストーンズのオープニング・アクトをつとめるなどかなり人気があったようです。しかし、時代の流れには逆らえず1970年のラスト・アルバム「キャプチャー・ザ・モーメント」を最後に解散します。
ちなみにこのラスト・アルバムで準メンバーとして参加していたのが、ウォルター・ベッカーとドナルド・フェイゲン。後にスティーリー・ダンを結成する二人です。ケニーはこの二人の才能を当時から高く評価していたようです。
 
 その後1975年にソロアルバム「ヴァンズ32」1988年には「ショート・バケーション」をリリース。2枚ともアメリカン・ポップスのエッセンスがぎゅっと詰まったSSWの名盤として語り継がれています。

1978年には伝説のDJアラン・フリードの自伝映画「ホット・ワックス」に架空のドゥ・ワップ・グループ、プロフェッサー・ラプラノ&ザ・プラノトーンズとして出演していましたが、1992年にはケニー・ヴァンス&ザ・プラノトーンズとしてほんとうに実在するドゥ・ワップ・グループを作ってしまいました。メンバーがまたスゴイ。
元ブルックリン・ドリームス(4枚のアルバムあり。セカンドの”SLEEPLESS NIGHTS”はよく聞いてました。)のジョー・エス・ポジート、エディー・ホーケンソン。
ネヴィル・ブラザーズらに曲を提供しているシンガー・ソングライター、デヴィッド・フォアマン。(この人のソロアルバムも隠れ名盤)
そして、ブログで紹介したことのあるフィフス・アヴェニュー・バンドのマレイ・ウェインストック。
1994年からは、デヴィッド・フォアマンに代わって、タートルズへの曲提供で知られる名コンビ、アラン・ゴードン=ゲイリー・ボナーのゲイリーが正式メンバーとして加入しています。ニューヨークのポップスの生き字引のようなメンバーが脇を固めてるんですね。

 そんな、ケニー・ヴァンス&ザ・プラノトーンズのアルバムの中でも特にお気に入りなのが、2005年にリリースされたアルバム「Lovers Island」収録曲を挙げますと、括弧がオリジナルです
1. Lonely Way(Skyliners)
2. Everybody's Somebody's Fool(Heart beats)
3. Stormy Weather(Five Sharps)
4. For Your Precious Love(Jerry Butler & Impression)
5. My Memories of You(Harp tones)
6. We Belong Together (Videls,Robert & Jonny)
7. Diamonds and Pearls [Acappella Version](Paradons)
8. Angel Baby(Rosie & The Originals)
9. To Be Loved (Forever) (Pentagons)
10. What Are You Doing New Year's Eve? (Orioles)
11. Lovers Island(Blue Jays)
12. Diamonds and Pearls (7と同じ)

全編ドゥ・ワップの名曲のカヴァーで、美しいコーラスとメロディーがこれでもかとたたみかけてきます。このCDを流しながら、一人で行く夏を惜しむもよし、二人で楽しかった夏の思い出に浸るのもよし、パーティで飲んで一緒に歌うのもよし、特に夏にはオススメの1枚です。(残念ながら現在は廃盤のようですがインターネットでダウンロード購入は可能のようです。)

 きっと、彼らが求めていた「ハーモニーの神様」に出会えると思いますよ。

(映画「奇跡の歌」(Looking For An Echo)の予告編?)

(”Looking For An Echo”byKenny Vance & The Planotones)

("For Your Precious Love"byKenny Vance & The Planotones)

2 件のコメント:

  1. ブラボー!!!

    For Your Precious Loveの女性に恋してしまいました。困っています。
    「Lovers Island」はえらく高い値段がついていますね。ちと手が出ません。

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  2. ジョージ・クルーニーはわかるんですが、お相手は誰なんでしょう?たまたま見つけたもので、出典がわかりません。どなたか教えて下さい。
    i-tune storeで1500円で全曲購入は可能なんですが、ほんと廃盤になるのが早いですね。

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