Album:WICA(ウィカ)
Song:見知らぬ手と手
「情けは人の為ならず」ということわざがあります。このことわざの意味を「情けをかけることは、結局はその人のためにならない(のですべきではない)」と解釈している人が意外に多いそうです。
本来の意味は「情けは人のためではなく、いずれは巡って自分に返ってくるのであるから、誰にでも親切にしておいた方が良い」ですが、英語にも「A kindness is never lost」(親切は決して無駄にならない)という表現があったり、聖書にも「して欲しい事を他人に為せ」という黄金律があるそうです。
人間がすべき道義の一つとして、この教訓があるんですね。
震災に対する支援は、このことわざの本来の意味をもう一度思い起こさせてくれます。私が住んでいる島原半島の島原市、深江町も過去に「雲仙普賢岳噴火災害」があり、平成3年6月3日には火砕流のため多くの命が失われ、終息するまでの約4年間でたくさん家屋が倒壊し、田畑は土石流のため押し流され、何百という家族が避難生活を余儀なくされました。時間は要しましたが、それから立ち上がり、今は平穏な生活を取り戻しています。それまでに、全国から沢山の支援をしていただきました。そしてその時に受けた「恩返し」をしたいと、今回、現地に行かれた方もいます。「恩返し」をしたいそういう気持ちがあって、見知らぬ手で届けられた思いが、また次に引き継がれていく。そして、日本だけではなく世界中に同じ意味の言葉があるように、海外の人達もその思いをもって、実際色々な国からボランティアとして参加してくれています。今までに日本から海外へ行き、戦争や貧困の中で苦しんでいる人々へさしのべられた暖かい心。これが「見知らぬ手から手」へ運ばれ、今度は日本に戻ってきているのかもしれません。
そんな事を考えながらEpoさんの”見知らぬ手と手”を聞いています。この曲が生まれるきっかけとなったのが、電車でたまたま見かけた、海外青年協力隊(JICA)のポスターだったそうです。人を突き動かす感動というは、何気ない風景や日常の言葉の中にもあるんですね。大事なのは、見る側にそれを読み取れる感受性があるかどうかなんですね。
Epoさんは1980にデビューCMソングなどのヒットでJ-Popを代表するポップス・シンガーと呼ばれていました。そんなパブリック・イメージに疑問を持ち1987年に突然、渡英。自分がほんとうに歌いたいことが何かを見つめ直すためだったようです。後に「風が吹いても、雨が降っても、揺れないもの。自分のアイデンティティに立ち返った音楽を1回やっておく必要があると思った」と述べています。
帰国後、セラピストの資格を取得。障害者・老人・子供向けのワークショップをおこなったりや心理カウンセリングを行うなど、音楽の世界にとどまらない社会的な広い視野に立った活動を積極的におこなっています。
1992年にこのアルバム「WICA(ウィカ)」は、音楽的にも転機となったアルバムでこの”見知らぬ手と手”を始め、人の死をみつめた”百年の孤独”など、社会や人生に対して深い洞察力を通して書かれた歌詞には、歌として伝えたい事が、それ以前のアルバムにくらべより鮮明になっているように思います。
今回の震災後も、いち早くチャリチィー・ライブを敢行されていて、その二日間のLiveの模様をそのままCDとして発売し、その収益を義援金として寄付されるそうです。興味のある方はこちらをご覧下さい。→EPO Music Temple 東北関東大震災復興支援Live
この歌詞と同じ気持ちで日本から旅立ち、海外で支援活動をされて来た方々、そして今、現地で被災者とともに黙々と復興に向けて支援されている方々に感謝を込めて、この曲を届けたいと思います。
握りしめた、見知らぬ手の温かさ、その時に湧き上がってくる感謝や勇気が、沢山の人に伝わり悲しみを越えることのできるほどの大きな力となっていきますように。
さすがに 気持ちの良い声ですね。
返信削除思わず聴き入りました。
一台のピアノとヴォーカルのみの世界。歌の輪郭がはっきりしていていっそう心に浸みてきます。歌心とそれを表現できるヴォーカルがあれば、充分伝わっていくもんなんですね。
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