2011年1月4日火曜日

飛躍の年~Van Dyke Parks

Artist:バン・ダイク・パークス
Album:Jump!
Song :Come Along

明けましておめでとうございます。今年も、宜しくお願いいたします。
年明けの、お題は何がいいかなあと考えてみましたが、干支にちなんで、「兎にまつわる1曲」というのはどうでしょう。サイケデリック&ラヴ・アンド・ピース世代(?)には、ジェファーソン・エアー・プレーンの”White Rabbit"などがすぐ思い浮かぶと思いますが、やはり Beach Boys Fanにとって、ウサギさんといえば、バン・ダイク・パークス(V-D パークスと略)の84年のアルバム「Jump!」でしょう。
 V-D パークスに関しては、色々なブログで取りあげてありますので、簡単にご紹介しておきます。
 1943年に、ミシシッピ州はハティスバーグの生まれ、ですから現在67才。子供時代は、子役として映画やテレビで活躍しており、1956年にはグレース・ケリー主演映画である「白鳥」にも出演しております。1960年にカーネギー工科大学へ進学後に音楽を専攻して、ピアノを学んだあと、1964年にはMGMレコードと契約をび、2枚のシングルを発表してます。”Number Nine/Do What You Wanta”(MGM K-13441)、” Come To The Sunshine / Farther Along”( MGM K13570 )この2枚のシングルは未だに超レア・アイテム。”Come To The Sunshine"は後にハーパス・ビザールがカヴァーしていますし、”Number Nine”の方はあの第九をV-D パークス風にアレンジしており、なんと、当時「No.9/気楽にいこう」という邦題で日本でも、シングルが発売されていたそうです。

 1966年、WBのブラザー・レコードにスタジオ・ミュージシャン兼アレンジャーとして働くようになります、この時にBeach Boysのブライアン・ウィルソンと出会い、アルバム「スマイル」で作詞家として、ブライアンとダッグを組むことになります。しかし、このプロジェクトは、ブライアンが精神のバランスを崩し、そのためドラッグに手を出し始め、またパークスのあまりにも難解な歌詞に対し、ビーチボーイズのメンバー、特にマイク・ラヴが反発したため、幻のアルバムとなり、結局オクラ入りになってしまいます。(「スマイル」はその後、30年あまりのち、ブライアンの手で完成をみますが・・・・)

失意の内にブライアンの元を去ったV-D パークスは自分のアルバムに全勢力を傾けることになります。そして1968年にアルバム「Song Cycle」をリリース。映画のサウンドトラックのようなオーケストラに、様々な楽器、さらにエフェクトを使用し、まるで音による万華鏡のような世界を繰り広げ、その当時としてはかなり斬新で、時代を先取りしたコンセプトアルバムとなりました。しかし、一部の音楽ファンからは支持されるもののセールス的に失敗に終わりました。
(やっと最近になって、時代がこのアルバムに追いつき、今ではサウンド・クリエイターを目指す人にとっては、バイブル的なアルバムになっています。)

その後、72年に「Discover America」、75年に「Clang of the Yankee Reaper」とアメリカのノスタルジックな音楽にスティール・ドラムを大胆に取り入れ、エキゾチックなカリブ音楽を融合させるなどかなり実験的な音楽に取り組んでいます。(でも中身はとてもポップですよ。)

そして4作目のアルバムとして83年リリースされたのが、ウサギさんのジャケが印象的なこのアルバム「Jump!」です。壮大なオーケストラ・サウンドによるミュージカルのようなオープニングから始まり、パープ、ピアノ、スティール・ドラムなど様々な楽器が、「古き良きアメリカ」を旅させてくれるような気分にさせます。実はこのアルバムのコンセプトは南部の黒人の民話である「ブレア・ラビット」が元になっています。
「ブレア・ラビット」はジョーエル・チャンドラー・ハリスの作品『リーマスおじさん(Uncle Remus)』シリーズに登場する架空のウサギで、ディズニー映画『南部の唄』の原作でもあり(1947年度のアカデミー賞では、「ジッパ・ディー・ドゥー・ダー(Zip-a-Dee-Doo-Dah)」がアカデミー歌曲賞を受賞)
今では、このウサギさん、ディズニーのキャラクターになっているんです。
でも、このディズニー映画『南部の唄』に対しては、全米黒人地位向上協会‎が本作品の黒人描写に対して抗議したため、アメリカでは1986年以降、ディズニー側の自主規制により一度も再公開されておらず、ソフト化されていないようです。(日本ではVHS,LDは発売されていたようですが、現在は廃盤)
 ちなみに、この作品を題材にしたアトラクションが”スプラッシュ・マウンテン”だそうで、アトラクションにおいてはアニメーション部分がメインとなっており、実写部分の登場人物はアトラクションの導入部分で音声のみの登場となっているようです。現在でも人気のアトラクションの一つでありながら、その題材となった作品を見ることが出来ないという状況が続いているという、悲運のディズニー映画となっています。(そろそろ解禁してもいいんじゃないでしょうか)

ちょっと話がそれてしまいましたが、『リーマスおじさん(Uncle Remus)』の原作者ジョーエル・チャンドラー・ハリスはかつて奴隷だった黒人達に取材し、集めた220話をこの本にまとめました。弱者(黒人)であるウサギと強者(白人)であるキツネやオオカミとの関係は、南部における人種差別の中で、黒人達が生き残っていくために体得した知恵を現しているとも言えます。V-D パークスはこのアルバムで、権力への怒り、正義感に同感し、子供達に輝かしい未来を託しているようにも思えます。V-D パークスのアルバムの中では地味な印象をうけますが、彼がずっと作り続けている、彼の心の中にあるアメリカの文化と音楽を彼なりの表現で綴ったアルバムで、素直に楽しめる作品になっていると個人的に思っています。

この後「Tokyo Rose」を挟み、1995年に精神的にやっと立ち直ったブライアンと30年という歳月を経て再びタッグを組み「Orange Crate Art」を完成させブライアンを励まし、未完だった「スマイル」にも協力し、完成へと導くことになるわけです。そんなわけで「Jump!」のタイトルのとおり、是非、今年は「飛躍の年」にしたいと思います。

(残念ながら,いい音源がありませんでした。)

(Brian Wilson and Van Dyke Parks - Orange Crate Art、30年後の邂逅、まだ話すのもたどたどしいブライアンですが、それを暖かく見守る、V-D パークスに唯々、涙です。)

(アルバム「Discover America」からV-D パークス作"The Four Mills Brothers"をオランダの学生さん達が森を行進しながら演奏してます。素敵なパレード。)

(これは室内での演奏風景、この学生さん達、かなりの強者とお見受けいたしました。)

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