2010年3月24日水曜日

デイモン・ラニアン〜Harpers Bizarre

Artist:ハーパース・ビザール
Album:Anything Goes
Song:Pocketful of Miracles









時は、禁酒法が罷り通っていた1930年代、所はNYはブロードウェイ界隈、クリスマス間近の街。りんごを売り歩く毎日を過ごす貧しい老女アニーの唯一の慰めは、離れて暮らす娘からの手紙だった。以前から、アニーは貧しい自分を恥じ、手紙では身分を偽り、街の名士たちと日々面会し高級ホテルを住処に忙しく活動する淑女であると娘に書き送っていたのだった。そんなある日、娘はスペイン伯爵の子息と結婚式を挙げることを知らせ、アニーとも引き合わせたいと言って来た。娘は完全に手紙の内容を信じている。このままでは嘘がばれて娘の将来が危うくなる。そう考えたアニーに救いの手を差し伸べたのは、アニーが売るりんごの不思議な力で急場をしのぎつづけているギャングたちであった…。
とこんな、ストーリーではじまる映画のタイトルは「Pocketful of Miracles」(邦題:ポケット一杯の幸福(しあわせ))。1961年のこの作品の監督は「オペラハット」、「或る夜の出来事」「スミス都へ行く」などの名作を作った名匠、フランク・キャプラ。
この作品、実は「一日だけの淑女」という1933年に自ら作った映画のリメイクなんですね。なんとも心温まるこのストーリーがよっぽど気に入ったのか、キャストも全部変えて再度撮ってるんです。老婆のアニー役にはキム・カーンズの名曲”ベティ・デイビスの瞳”に歌われたベティ・デイヴィス(たしかにこの女優さん不思議な目力がありますね)、ギャングの子分ジョイ役に駆け出しの頃の「刑事コロンボ」、ピーター・フォーク、そしてアニーの娘役に”Hey Little Star"などのポップスの名曲の歌い手でもあった、美貌のアン=マーグレットなど出演者もなかなか魅力的です。

 このお話には原作があり、デイモン・ラニアンという作家の「マダム・ラ・ギンプ」という短編が元になっているのですが、裏通りに住む人達の人情をユーモアと優しさをもって書かれたその短編たちに、二十歳の頃に夢中になり読みあさっておりました。短編のストーリーは、ほぼ共通していて、子供の無垢さや、ひたむきに生きる女性への純愛、老婆の哀しみなどに触れ、日頃そんなことは絶対しない悪党たちが情に絆され、「人肌脱いでやろうぜ」とばかり一生懸命に尽くす、その間のドタバタを面白おかしく読ませてくれたあと、最後にちょっとホロリとさせるという、おきまりのパターンなんですが、登場人物が生き生きと描かれて、どの短編もその当時の映画をみているような気分にさせてくれます。残念ながら、デイモン・ラニアンの短編集および文庫本も、現在廃刊になっていますが是非、再出版してもらいたいものです。

 今回は、この映画のテーマソングである”Pocketful of Miracles”を取り上げてみました。作者は数々の映画音楽を手がけたジミー・ヴァン・ヒューゼンとサミー・カーン。”But beautiful”、”Like Someone In Love”、”I Thought About You””All The Way ”などのスタンダード・ナンバーは彼等の作品です。

この曲もシナトラをはじめ、数々のヴァージョンがありますが、バーバンク・サウンド〜洗練されたポップス・センスとオールドタイム風のアレンジを巧みにミックスさせて奥行きのある独特のロック・サウンドを創りあげた一連のワーナー・ミュージックの作品〜の中で異彩をはなっていたコーラス・グループ、「ハーパース・ビザール」のヴァージョンがオススメです。
リード・ボーカリストとしてハーパース・ビザールの中核的存在であったテッド・テンプルマンは、グループの解散後にプロデューサー業へ転じ、ヴァン・モリスンの「テュペロ・ハニー」(1971年)、リトル・フィートの「セイリン・シューズ」(1972年)、ドゥービー・ブラザースの「キャプテン・アンド・ミー」(1973年)など、ロック史上に残る多くの名盤やヒット・アルバムを手掛けることでワーナー・ミュージックを代表するプロデューサーとなりました。

("Pocketful of Miracles" by Harpers Bizarre)

2 件のコメント:

  1. はじめまして。
    最近このブログに行き当たり、以来たびたびお邪魔しています。
    フランク・キャプラだったのですね。これをきっかけに映画を観てみたくなりました。
    映画とハーパース・ビザール、切っても切れない縁ですね。
    僕と彼らの出会いも映画館でした。
    76年に二番館で観たフリードキンの”真夜中のパーティ”のオープニンのシーンに”Anything Goes"が使われていました。
    惚れ込んだ自分は東京中の輸入盤屋さんを駆けずり回ってカット盤を手に入れ聴きまくっていましたが、当時はバーバンクをいうくくりも知らず、ロクシーやセイラー、サヴァンナ・バンドといった洒落っ気命のようなバンドと並べて聴いていました。
    聴く者によって位置づけってずいぶん変わるものですね。
    今のように情報の集まらない昔ならなおさらで、そうした違いを聞いてまわるのも楽しそうです。
    いきなり長くなりました。
    また寄らせていただきます。ではでは。

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  2. miracle-muleさん
    コメントありがとうございました。古いハリウッド映画にはいい映画が多いですね。この年のアカデミー賞の歌曲賞にこの”Pocketful of Miracles”もノミネートされていたようですが、結局「ティファニーで朝食を」の“Moon River”にもっていかれたようです。ハーパース・ビザールはスタンダード・ナンバーのアレンジが素晴らしいですよね。バカラックやロジャー・ニコルスのハーパース・ビザールのヴァージョンはいまでもお気に入りです。
    確かにその当時は「バーバンク・サウンド」など知るよしもなかったのでおしゃれなコーラス・グループとして聞いていたように思います。
    また、時々興味があったらコメントお願いします。

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