2010年12月20日月曜日

からっぽの椅子~Woodstock All Stars

Artist:ウッドストック・オールスターズ
Album:Woodstock Holidays
Song:I Shall Be Released

 食べたい物が、食べれない、見たい物が、見れない、聞きたいものが、聞けない~戦争や、貧困、そういう状況でなくとも病気などで、色々な理由で人々に色々な苦痛がのしかかってきます。そんな中で、一番つらいことは、自由に発言できないことです。
主のない空っぽの椅子、その上に置かれているのは、ノーベル平和賞のメダルです。この一枚の写真は人々の心を動かします。











TVのニュースなどでご存じでしょうが、今年のノーベル平和賞は中国の人権活動家、劉暁波(りゅう ぎょうは)氏が受賞しました。劉氏は、2008年に民主的立憲政治を求める零八憲章を起草して拘束され、2020年6月21日までの懲役刑の判決を受け錦州監獄で服役中です。(この先10年間もあります!)
零八憲章は「前言」、「我々の基本理念」、「我々の基本主張」、「結び」の4部分と、一次集約段階で303名の実名による署名からなります。「前言」では、その時点での中国を「党の天下」と表現し、「党が政治、経済、社会の資源を独占し、大躍進や文化大革命、第二次天安門事件を生みだし、国民と国家が極めて大きな代価を払った」と批判し、その上で、以下の「我々の基本理念」と「我々の基本主張」を挙げています。
基本理念
自由 - 言論、出版、信仰、集会、結社、移動、ストライキやデモ示威等の権利
人権 - 人は国家の主体であり、国家は人民に服務し、政府は人民のために存在する
平等 - 公民は、社会的地位、職業、性別、経済的状況、種族、皮膚の色、宗教や政治思想にかかわらず、その人格、尊厳、自由はみな平等である
共和 - 「皆による自治と平和な共生」、分権制と利益バランスを求める
民主 - 主権は国民と国民が選んだ政府にある
憲政 - 法治によって政府権力を制限し行為の境界を主張する

 彼が求めているものは、我々が小、中学校の社会で習ったような、民主主義の基本の基本を主張しているだけです。なにも国家を転覆させるような、過激な思想でもなんでもありません。日本に育った我々は当然思います、決して間違ったことは言ってないと。なのに12年も服役しなければならない、誰が考えても異常なことです。
中国は今後も経済的には発展していくでしょうが、経済的に発展すれば、必ず、貧富の差が生まれてきます。その富を、どのように分配していくのか、どんなことにその富を使えばいいのか、それは、国民同士で話し合って決める必要があります。
自由に発言してはじめて、理解なり、批判が行われるべきで、決して一握りの特権階級が決めるべきことではないのです。そういう意味では中国の民主化の波は止められないと思います。民主化への声を、弾圧という防波堤でなんとか食い止めているかもしれませんが、一つでも小さな穴が開けば、やがて途方もない力となって流れ出すことでしょう。その小さな穴が今回の出来事だったと思います。

 もうすぐクリスマスです。劉氏はどんな思いで、今年のクリスマスを迎えるのでしょうか。
十年ぐらい前でしょうか、ウッドストックに在住しているミュージシャン達が、素敵なクリスマスアルバムを作ってくれました。最後はこの曲で締められています。
 
I Shall Be Released

They say ev'rything can be replaced,
Yet ev'ry distance is not near.
すべてのものは置きかえられるという
でも、すべての距離ははっきりしていない
So I remember ev'ry face
Of ev'ry man who put me here.
だから,すべての顔を覚えている
私を、ここに置いたすべての人の顔を
I see my light come shining
From the west unto the east.
Any day now, any day now,
I shall be released.
私が放つ光が輝いているのがみえる
西から東へ
もうすぐ、すぐにでも
私は自由になれるんだ

They say ev'ry man needs protection,
They say ev'ry man must fall.
だれもが、保護が必要だという
だれもが、堕落するという
Yet I swear I see my reflection
Some place so high above this wall.
だけど、自分の分身が見えるんだ
この壁よりもっと高いどこかに
I see my light come shining
From the west unto the east.
Any day now, any day now,
I shall be released.
私が放つ光が輝いているのがみえる
西から東へ
だから、もうすぐ、すぐにでも
私は自由になれるだろう

Standing next to me in this lonely crowd,
Is a man who swears he's not to blame.
この孤独な群集の中に
自分は悪くないという奴が立っている
All day long I hear him shout so loud,
Crying out that he was framed.
一日中、大声で叫ぶ声もきこえる
自分はめられたと泣き叫ぶ声が
I see my light come shining
From the west unto the east.
Any day now, any day now,
I shall be released.
私が放つ光が輝いているのがみえる
西から東へ
だから、もうすぐ、すぐにでも
私は自由になるだろう

風には国境がありません。
数年前、ウッドストックから発信されたこの曲は、日本の私のもとへ届きました。
そして、こんどはクリスマスの頃に風にのって、中国にいる孤独な彼のもとへ届くことを祈りつつ・・。

(残念ながらこの音源はありません)

(Joe Cocker - I Shall Be Released (Live at Woodstock 1969))


2 件のコメント:

  1. Woodstock での Joe Cocker は鬼気迫るものがあります。
    丁度その頃北海道のど田舎で生まれた僕が
    彼を知ったのはもう随分良い年になってからでした。
    彼の音楽を知らずに過ごした10代が悔やまれてなりません。

    やはり最初はミーハーですから
    “with a little help・・・”から入りました。
    そのつながりで思い出しましたが、
    イギリスの映画監督にケネス・ローチと云う人がいて
    彼の映画『リフラフ』の中で女の子が超下手くそな
    “with a little help from・・・”を歌うシーンがあるのですが、
    ヘタクソなんだけれども何かこう惹き付けられるものがありました。
    機会があればご覧になってみて下さい。

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  2. ”I Shall Be Released”は今ではスタンダードナンバーになっていますので。かなりの数のカヴァーがありますが、やはりJoe Cocker やザ・バンドあたりは外せません。前々回に書きました”Many River To Cross”もJoe Cockerの素晴らしいカヴァーがありますね。この年になると、こんな渋いヴォーカルが心に浸みます。映画『リフラフ』はまだ見たことがありません。機会かあれば、見てみます。

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