Album:Seasons Of My Soul
Song :Am I Forgiven
最近、聞くべき新人がいないとお嘆きの、SSWフリークの諸氏。見つけましたぞ。有望株を。すでに巷ではチラホラと話題になっておるようです。
(なんでも、UKではいきなりデビューシングルがヒット・チャートの3位になっておるようですが・・・)
その名はルーマー(Rumer)。UKの新聞には「カレン・カーペンターを彷彿させるイノセント・ヴォイス」とか、「あのバート・バカラックも大絶賛」とか、かなり騒がれておるようです。
私めも、アルバムに針を落として(といってもCDですが)、1曲目のこの曲ですぐ虜になってしまいました。ストレートな素直な声。中音域の声は、なるほどカレン・カーペンターにも似ているような気もします。
31才遅咲きのデビューです。それには、この人のドラマのような波乱の人生があったのです。
生まれたのはパキスタン。エンジニアだったという父の仕事の関係で、子供時代をパキスタン、タスマニア、そして南アフリカで過ごす。新聞もTVも無かったという孤立した辺境の地で、彼女は初めて音楽に触れる。兄からもらったギターを独学で習得。曲作りを始める。TVもなにもない環境では、彼女にとって唯一の楽しみだったでしょう。一家はUKに戻り、生まれて初めてTVを見て、テクニカラーのミュージカル映画に取り付かれたように夢中になり,学校にもなじめないこともあり,やがて音楽的なインスピレーションや慰めを古い映画の中に見出すようになったようです。この人の作るメロディーが妙に懐かしいのはその為かもしれません。
11歳の時に両親が離婚。更にそれをきっかけに衝撃の事実――彼女が今まで「父」と呼んでいた人は「生物学的な父」ではなく,また兄弟姉妹の中で自分だけ父親が違うことを知る。しかし彼女の「父」は,一家のコックとして仕えていたパキスタン人男性と母の間に生まれた彼女を,決して他の兄弟姉妹と区別することなく育ててくれたそうです。(ん〜まるで昼メロ。)
両親の離婚後,その「父」と暮らしていた彼女は16歳のときから放浪を始める。しかし母が癌で2003年に死去。彼女は人生のどん底に落ちる。嘆き悲しみながらもひたすら曲を作り続け、なんとか音楽で生きていこうと決心。ロンドンでさまざまな仕事を掛け持ちしながら音楽活動を続け,自らの腕を磨く努力を怠ることなく,あらゆるチャンスに挑戦していった。しかし、長い下積み生活は10年にも及んだ。
そして2010年,Rumer 31歳の時,ようやく今まで積み上げていたものが花開く時がきます。自身のFacebookに「今一番過小評価されていると思う人は誰?」という質問を投稿した彼女の現在のマネージャーが、「Rumer」と答えてきた人間(しかも互いに関係の無い全くの他人同士)が5人もいたことに注目!彼女を探し当て、契約を交わしたのです。そこから話はトントン拍子に進み,彼女は3月にはAtlantic UKとの契約を手にしたそうです。
なんとドラマチックな人生じゃありませんか。この話を聞いただけでも、なんか応援したくなります。
デビューシングルの”Slow"や2ndシングルの”Aretha"もいいのですがなんといってもこの”Am I Forgiven”にはやられました。初期のローラ・ニーロ。ロジャ・ニコの香りがします。現在、輸入盤が発売されてますが3月に発売される予定の日本盤(ジャケも違います。)がボーナス・トラックや訳詞もついていると思われますのでそれまで待つのが得策かと。
「やっと出会えた」運命の1枚、とにかくオススメのアルバムです。
(”Am I Forgiven” &”Aretha”by Rumer)
("Alfie" by Rumer なるほどバカラックが絶賛するのもわかります。)